2026年10月26日から31日までの6日間、東京ビッグサイトにて「JIMTOF2026(第33回日本国際工作機械見本市)」が開催されました。
JIMTOFは、国内外の工作機械メーカーや工具メーカー、関連企業が一堂に会し、最新の技術や製品を紹介する世界有数の工作機械見本市です。
弊社からは10月30日、31日の2日間にわたり視察を行い、工作機械や切削工具の最新技術に触れるとともに、多くのメーカー関係者や製造業に携わる方々と交流する機会を得ました。
会場は多くの来場者でにぎわい、各ブースでは最新技術を熱心に見学する方々の姿が見られました。
今回の展示会で特に印象に残ったのは、AI技術の進展、限りある資源を有効活用するための取り組み、そして人と人とのつながりの広がりでした。

AIが製造現場にやってくる
今回のJIMTOFでは、AIを活用した技術が各所で紹介され、製造現場への実装がいよいよ現実味を帯びてきたと感じました。
これまでAIといえば、文章作成や情報検索など、主にオフィス業務での活用が注目されてきました。しかし、今後は工作機械の保守やトラブル対応、さらにはロボットの動作制御など、実際の製造現場でも活躍の場が広がっていきそうです。
ヤマザキマザック様のブースでは、AIを活用した工作機械の保守支援について詳しく説明を受けました。
工作機械に発生したアラームの内容をAIが解析し、膨大なマニュアルや過去の保守情報から必要な情報を探し出すことで、オペレーターが確認すべき箇所や対応方法を支援するというものです。
さらに、トラブルの状況をサービスセンターへ正確に伝えるための橋渡しとしても、AIの活用が検討されていました。
これらは実用化に向けた開発段階の取り組みですが、長年蓄積されてきたメーカーの知識や経験を、より多くの人が活用できる可能性を感じました。
今後、製造業では熟練技能者の減少が懸念されています。一方、これから製造現場に入ってくる若い世代にとって、AIを活用することはごく自然なものになっていくのかもしれません。
経験の浅い技術者がAIの支援を受けながら知識を身につけ、少しずつ経験を積み重ねていく。
もちろん、実際に機械を動かし、加工する中でしか得られない経験や感覚もあります。しかし、AIが新しい世代の学びを支える存在になれば、これからの製造業には大きな可能性が広がるのではないでしょうか。

職人技とロボットの新たな関係
AIとともに注目を集めていたのが、ロボット技術の進化です。
人型ロボットをはじめ、実際の作業環境に応じて動作するフィジカルAIへの取り組みも、会場の各所で紹介されていました。
中でも印象的だったのが、工作機械の精度を支える伝統的な技能「きさげ加工」に関する展示です。
会場では、熟練技能者によるきさげ加工の実演や、来場者が実際に加工を体験できるコーナーが設けられ、多くの注目を集めていました。
さらに、ロボットアームによるきさげ加工の実演も行われていました。
長年の経験と繊細な感覚が必要とされる職人技に、ロボットを活用しようという取り組みです。
人の手で行われる繊細な作業と、ロボットによる加工。その両方が同じ会場で紹介され、多くの来場者が足を止めて見入っている光景が印象的でした。
もちろん、ロボットがすべての職人技を置き換えられるわけではありません。しかし、人が培ってきた技術と最新のロボット技術を組み合わせることで、新しい可能性が生まれようとしています。
人の技術を守りながら、新しい技術も積極的に取り入れていく。
今回の展示は、これからのものづくりの姿を象徴しているように感じました。

タングステンの供給問題と切削工具の進化
切削工具の分野では、タングステンの供給不安や価格高騰を背景に、省資源化への取り組みが大きなテーマとなっていました。
タングステンは超硬工具に欠かせない重要な資源ですが、産出地域の偏りや輸出規制などによって、安定供給への懸念が高まっています。
こうした状況の中、各工具メーカーでは、使用する超硬合金の量を減らしながら、加工性能を維持・向上させるための技術開発が進められていました。
例えば、ソリッド工具から刃先交換式工具への転換や、インサートの小型化、工具寿命の延長などです。
実際に各メーカーのブースを回っていると、限られた資源をいかに有効に使うかという課題に対し、それぞれの技術や工夫で応えようとする姿勢が伝わってきました。
ただし、資源の使用量を減らすことだけが目的ではありません。
切削工具には、加工精度や生産性、安定した工具寿命など、現場で求められる性能があります。
限りある資源を大切にしながら、いかに高い加工性能を実現するか。
工具メーカー各社の展示からは、そうした課題に向き合う姿勢が強く感じられました。
また、工具を使用する私たち加工現場にとっても、適切な工具選定や使用済み工具の回収など、資源を有効に活用するためにできることがあります。
今回のJIMTOFは、切削工具の性能だけでなく、その材料となる資源についても改めて考える機会となりました。

メーカーとの技術交流、そして新たな出会い
今回も、日頃からお世話になっている工具メーカーや工作機械メーカーの皆様と、さまざまな意見交換を行うことができました。
これまでYouTubeなどで共同企画を行ってきたタンガロイ様、住友電工様をはじめ、株式会社彌満和製作所様、オーエスジー様など、関係の深いメーカーの皆様とも、今回の展示テーマや今後の工具開発の方向性についてお話を伺いました。
普段からお付き合いのある担当者の方々とも再会し、展示されている工具を前に、実際の加工現場での使い方や今後の技術について話が弾む場面もありました。
実際に工具を使用する加工現場の意見をメーカーへ伝え、メーカーの開発に対する考え方を直接聞くことができるのも、JIMTOFの大きな魅力です。
また、今回はこれまでとは少し違った交流もありました。
私自身、「近藤鉄工所 工場長」としてXで製造現場の情報発信を始めてから、初めて迎えるJIMTOFでした。
会場では、日頃からSNSを通じて交流しているメーカー関係者や、全国の製造業に携わる方々、熟練技能者の皆様と直接お会いする機会にも恵まれました。
広い会場を歩いていると、思いがけずお声掛けいただくこともあり、SNSでのつながりが実際の出会いにつながったことを、とても嬉しく感じました。
画面越しに交流していた方々と、実際に顔を合わせ、ものづくりについて語り合う。
これまでとは少し違うJIMTOFの楽しさを感じた2日間でもありました。
技術や情報を得るだけでなく、人と人とのつながりを深めることも、展示会の大切な役割なのだと改めて感じました。

製造現場から始まる資源循環
今回のJIMTOFで、もう一つ忘れられない出来事がありました。
最終日の10月31日、産業ジャーナリストであり、製造業専門ニュースサイト「製造現場ドットコム」を運営されている那須直美氏の講演「未来を動かす機械ビジネスの醍醐味」を聴講しました。
講演では、機械産業の魅力や今後の可能性について、さまざまな視点からお話がありました。
その中で、タングステンの供給問題とリサイクルについて取り上げられた際、思いがけない出来事がありました。
会場の大きなスクリーンに、見覚えのある工場の写真が映し出されたのです。
それは、以前「製造現場ドットコム」でご紹介いただいた、弊社の使用済み超硬工具の分別・回収に関する写真でした。
写真とともに「近藤鉄工所」の社名や取り組みが紹介され、まさかJIMTOFの講演会場で自社の活動を目にするとは思っておらず、大変驚きました。
弊社では、使用済み超硬工具を社内で仕分け・分別し、国内の資源循環につなげる取り組みを、従業員への教育も含めて日常的に実践しています。
普段は工場の中で当たり前のように行っている活動ですが、世界的な資源供給の問題から国内でのリサイクルに至る大きな流れの中で、弊社の取り組みを紹介していただいたことに、驚きとともに身の引き締まる思いがしました。
タングステンのような限りある資源を有効に活用するためには、工具メーカーやリサイクルに携わる企業だけでなく、実際に工具を使用する製造現場の協力も欠かせません。
一つひとつの工場で行われる地道な分別や回収も、積み重なることで大きな資源循環の一部となります。
今回、弊社の活動を取り上げていただいたことに感謝するとともに、これからも責任を持って取り組みを続けていきたいと感じました。

これからのものづくりに向けて
今回のJIMTOF2026では、AIやロボットなどの技術革新が、これまで以上に身近なものになってきたと感じました。
一方で、職人が長年培ってきた技術、限りある資源を大切にする取り組み、そしてメーカーや同じ製造業に携わる方々とのつながりなど、時代が変わっても大切にしていくべきものがあることも再認識しました。
新しい技術は、これから製造業を担う若い世代にとって、大きな力になる可能性を秘めています。
私たちも変化を前向きに捉え、積極的に学びながら、日々のものづくりに生かしていきたいと思います。
最後になりますが、今回のJIMTOFでお世話になった出展企業の皆様、交流していただいた皆様、そして素晴らしい展示会を支えてくださった関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。
株式会社近藤鉄工所
工場長 近藤 勝紀